小浜が緩めたルールを仕切り直して出した虎さんの大統領令が効いてきた❣
米中の金融業界でのデカップリングが進む、
中国企業の上場申請の審査を止めるアメリカ、
中国がアメリカの政治に影響力を与える最も強いチャンネルをなくすことになるのか?
中国企業の上場申請の審査を止めるアメリカ、
中国がアメリカの政治に影響力を与える最も強いチャンネルをなくすことになるのか?
Harano Times 2021/07/31
皆さん、こんにちは。まず1点、昨日の動画の事で補足したい内容があります。昨日の動画の中で習近平が教育産業に制限を掛けたのは中国の経済に貢献出来る人が欲しいからと皆さんに紹介しました。
もう1つとても重要なポイントを言い忘れました。それは中国の人口の問題です。今、中国の若者が子供を産みたくない理由の中の1つは、中国で子供を育てるコストが非常に高いからです。
そのコストが高くなった理由の1つは、学外の塾に行かせる為に親たちがかなりのお金を掛けているからです。1人の子供を育てるだけでもかなりお金が掛かるのに、もし2人、3人を出産すると、普通の家庭は負担出来ないです。
若者が子供を産みやすい環境を作る為に学外の教育産業を殺さないといけない状況になっている事も、今回習近平が教育産業に手を出したとても重要な理由です。ここで補足します。
では、今日の話に入ります。昨日の話の中で、習近平がIT産業に続いて、教育産業に大幅な制限を掛けたから、アメリカのウォール街でかなり不満があった事について皆さんに紹介しました。
又、この前滴滴の件について皆さんに紹介した時、習近平のそのやり方は、中国の企業がアメリカに行って上場する事を阻害すると話をしました。
早速、アメリカは中国共産党のこのやり方に対して、緊急な対応策として、アメリカで上場申請している中国企業の申請の審査を全部中止しました。
この前、中国の企業が現在の状況を見て、自らアメリカで上場する計画を止めた話がありましたが、今回はアメリカ側がドアを閉めた事になります。
ワシントンポストの報道に依りますと、アメリカの証券取引委員会、略してSECは、中国当局は民間企業に対して厳しい制限を掛けている事が理由で、今、中国企業がアメリカの株式市場で上場する申請の審査を一時停止しました。
SECはアメリカで上場したい中国の会社はもっと多くのリスクに関する情報を出さないといけないと主張しています。
この判断をしたのは、SECの委員長ゲイリー・ゲスラです。彼は、中国当局の最近にやり方はアメリカの投資家に大きな影響を与えた。アメリカで上場した企業は、投資家を守らないといけない。
もし中国の企業がシッカリとリスクを公開しないと、いつか中国政府がその企業、又は産業に対して制限を掛けた時に、投資家が大きな損をすると言ったんです。
中国政府が中国民間企業の経営にどれ程関与していくのかに関する情報は投資家にとって、とても重要な情報になる。アメリカの投資家を守る事はSECの最も重要な役割の1つと言っています。
だから彼らは中国の企業がアメリカで上場する申請の審査を一時停止しました。
中国共産党の最近、民間企業に対する一連の制限によって、中国企業の株はアメリカの株式市場で売られる様になりました。中国企業の株価は今年の2月の時のピークと比べると、既に1兆ドルの価値が消えました。
習近平の様に、自分の国の企業に、此処まで傷をつける人は、もう、この世の中に居ないかもしれません。
今、SECはアメリカの国会から、かなり強いプレッシャーを受けています。習近平が滴滴に重い打撃を与えた後、アメリカの国会議員はSECにプレッシャーを掛けて、滴滴が上場する前にシッカリ、リスクに関する情報を提供したかどうかの調査を行う様にと言っています。
中国とアメリカの金融領域がデカップリングし始めたのは、去年の5月からです。トランプ大統領はアメリカの金融企業の統一性を守る大統領令を出しました。
つまり或る国にAという基準を使って、或る国にBという基準を使う事をやめるべきと考えていました。それで専門のチームを作って、中国の企業がアメリカで上場する事の実態を調査する様にしました。
その目的はアメリカの投資家たち、アメリカの株式市場で投資活動を行う人を守る為です。アメリカの株式市場のルールを守らずに、必要な情報を公開せずに、アメリカで上場して、資金を集めるとなると、アメリカの投資家たちは、リスクを知らずに損失を出す事になります。
これはオバマ時代で中国の為にルールを緩め、中国の所謂「国家秘密」を公開してはいけないという言い訳を受け入れて、中国企業の上場を認めました。
それは今迄のアメリカの株式市場の公平性、透明性を破壊する事でした。その間違えた判断のツケが回ってきた事になります。
過去の動画でも話した事がありますが、投資家が1番嫌うのは「不確定性」です。投資で利益を得る事は、誰も保証出来ない事ですが、でも、リスクを出来るだけ排除する、「不確定性」を出来るだけ排除する事は、どの投資家も考える重要な事です。
今、アメリカに居る中国の企業は、正に大きな「不確定性」の影響を受けています。中国共産党が「いつ」「どんな」手段を使って、その企業を崩しに来るか分からないからです。
滴滴に否定されましたが、先日ウォールストリート・ジャーナルは、滴滴がアメリカの株式市場から撤退する噂があると報道していました。
この様な噂が出る位、滴滴が中国当局から非常に大きなプレッシャーを受けている事が分かります。中国当局が民間企業にここ迄プレッシャーを掛けると、昨日の動画で皆さんに紹介した通り、中国の教育関連の企業の株価は1日で半額になったりすると、どの投資家も耐える事は出来ないと思います。
SECの審査が厳格ではない為、投資家をこの様なマーケット以外のリスクに晒すとSECの失格になります。
今迄、中国の経済が順調に成長して、中国共産党は中国の企業が海外に行って資金を集める事をサポートしてたから、中国の企業も普通に成長して、アメリカが審査を緩めて、中国の企業が上場出来るようにしたとしても、そのリスクは経済の成長の裏に隠れていました。
でも、今、経済があんまり良くない時、それと同時に中国共産党が民間企業に対して厳しい制裁を掛けた時に、今迄隠れていたリスクが浮上して、アメリカの証券取引委員会も目をつぶる事が出来ない所まで来ています。
トランプ大統領が発行した大統領令はアメリカで上場した中国の企業は、アメリカの審査基準を満たさないと、アメリカの株式市場から撤退しないといけないと決めていました。その期限は今年の年末になっています。
中国の企業がアメリカで上場した時は、アメリカの審査の基準を満たしていない事が多いので、今のこのタイミングで中国企業の株価が下がっていくのは、もう避けられない状況になっています。中国とアメリカの金融業界はデカップリングの方向に向かって進んでいます。
この前、アメリカで上場していた中国の三大通信会社はアメリカの株式市場から撤退させられて、香港の株式市場に行きました。
それと今回のSECの判断等は全部、中国とアメリカが金融業界でデカップリングしているサインです。
又、4月頃にアメリカの有名なキキン会社(?)は突然中国から撤退する事を選びましたし、4大会計事務所はアメリカと中国が金融業界でデカップリングしているこの状況の中で、アメリカと中国両方から訴えられる可能性もあって、かなりやり辛い状況になっているという報道もありました。
習近平が滴滴に対して厳しい処罰を下した時、このドミノを倒したと思っていなかったかもしれません。
では、視点を変えて、習近平がこの結果を予測出来ずにドミノを倒してしまったのではなく、ワザとこの様な事をした可能性もあるという見方もあります。
では、習近平がワザとこうやっているという前提で考えている時は、それに3つの理由があると思います。
先ず、習近平がこの機会を利用して、どんな結果になるかに関わらず、自分の反対勢力の収入源を切る事を狙っています。
又、いつかアメリカと対立する時の準備の為に予め少しずつ、アメリカと関係を切っていく事です。もし、金融面で強い関係がある侭、アメリカと対立してしまうと、中国の会社が一気に打撃を受けて、中国の経済が一気に落ち込んでしまう可能性もありますので、それの準備をしているかもしれません。
最後は、今、習近平がやっている事は、彼が共産党のトップになった後に打ち出した「初心を忘れず」のスローガンを実現させる為の行動です。
共産党の「初心」は何か。私有財産を消滅させる事です。今の中国共産党は資本家の集まりになっていますので、この様な事を考えている人は居ないと思いますが、習近平がトップになった後、この様なメッセージを何回か出した事がありますので、いつか民間企業を全部国の物にする為に、少しずつ、そのコントロール権を取る事を計画しているかもしれません。
今、中国共産党がどんな理由で民間企業に対して厳しい制限を掛けたかには決まった答えが無いんですが、でも実際に、アメリカと中国の金融業界でのデカップリングが進んでいる事は明白です。
ウォール街は中国共産党とアメリカの政治家を繋ぐ最も有力なチャンネルの1つになります。もし、いつかこのチャンネルが完全に切られてしまうと、中国共産党がアメリカの政治に影響を与える能力がかなり弱まってしまいます。
これからもこの様な話をしていきますので、ご興味のある方は、是非、フォロー、コメント、拡散をお願いします。では、又、次回、お会いしましょう。
関連情報
デカップリングに歩を進める中国
岡本裕明 アゴラ言論プラットフォーム 2021/07/28
配車サービスの滴滴(DiDi)への締め付け、オンライン教育企業のTAL、New Oriental、Gaotuといった米国上場教育企業のNPO化計画、そしてテンセントが出資するフードデリバリー会社の美団には独占慣行の疑いと給与待遇面で当局の調査が入っています。アリババやテンセント、京東など中国を代表する大手企業の株価も高値から約4割下げ、なお下げ止まりが見えず、投資家が手を引き始めているのが見て取れます。
一体中国で何が起きているのでしょうか?
私が見る習近平体制は「敵の力をそぐ」に尽きるとみています。ここに至る手法は毛沢東が大躍進から文化大革命に至るまでの流れに似ています。習氏の場合、それまでの融和路線、国際協調路線から一気に独自路線に突っ走ります。氏がトップにたった2013年頃から数年は派閥内の争いが激しく、特に夏の北戴河会議では長老との関係に苦心してきたことも事実です。それから年月が経ち、長老が歳をとってきたこともあり、習氏のポジションが有利になったこともあるでしょう。
2020年に北戴河会議が開かれたかどうかは定かではありません。開かれなかったとしたら異例です。この会議はそもそも非公開であるため、漏れ聞こえてくる話で開催の様子が分かるのですが、昨年は何も漏れてこなかった、つまり、開催されなかったのではないか、とされるわけです。では今年はどうか、といえば常識的には行われるはずです。理由は自身の3期目の人事と首相の李克強氏が中国憲法上任期が23年3月までであるため、その後任の話があるだろうというわけです。李氏については時間的には1年半以上もあるのですが、党内派閥の整理から始めるにはそれぐらい時間がかかる、ということかと思います。ただ、「習近平、派閥を相手とせず、よって北戴河会議は今年もない」という分析もあるにはあります。
一方、自身の任期については終身ないし、あと5年×3回=15年など様々な見解が飛び交います。あと15年説というのは同国の一部の中期計画がそうなっているからというのですが、中国指導者の最高齢が鄧小平氏が85歳だった時なので自身の年齢に合わせているという見解もあります。どちらにしろ習体制の足場固めに入っているとみてよいと思います。
だいぶ前のこのブログで習氏の唯一の敵は国内かもしれないと申し上げました。その後、アリババの金融子会社のアント社の2日前の上場中止命令、滴滴の当局の警告を無視した米国上場に対する仕打ちなど資本の力をベースに拡大路線を取る私企業を本気で潰しにかかります。これは金を儲ける⇒共産党の考え方と相反⇒党支配に於ける不穏な分子⇒資本家思想を完全抹消という流れを想定した展開かと思います。
では一般の中国人はこれらの動きにどう思っているのでしょうか?基本的には分かっているけれど口にしない、それだけです。当局は怖い、だから逆らわないのです。では、いつまでその従順さを見せるのかといえば、綻びが見えたとき、国民は蜂起するかもしれません。何処から綻ぶかはわかりません。習氏のお手付きか、ウイグル族やモンゴル族など民族蜂起か、はたまた台湾へ仕掛けた力業に対して国際世論からの強力なバッシングと厳しい経済制裁がある時でしょうか?文化大革命の末期のようなみすぼらしい結果となれば習体制は一気に崩壊します。
近年の中国を外から見ると砂上の楼閣に見えるのです。かつては海外の専門家や企業を三顧の礼で招き入れ、自国の経済発展のために必死に勉強し、努力した可愛げもあったのですが、自分でできると思い込み、海外の企業も人間もポイ捨てです。ただ、国内経済の実情は厳しく、内需振興も計画を下回るように見えます。
習近平体制は盤石か、と言えば脆弱とみています。それは習近平氏への権力集中でしかなく、周辺の忠誠がなく、ドライで割り切っていると考えています。次のチャンスや変化するタイミングをあらゆる層の人が黙って待っているとも言えましょう。デカップリングを進める今の政策では奈落の底に向かう一丁目一番地です。
一方、多くの日本企業が中国に進出しています。中国にとっては「しめしめ」です。理由は有事の際、彼らが担保であり、資産になるからです。中国は日本企業をウェルカムし続けます。そして日本の財界が中国を重要なパートナーだと主張する間に、尖閣諸島が実力で奪われ、日本政府が猛然とクレームし、軽い衝突でもあった瞬間に中国にある日本企業の資産を抑えることができます。その時、中国の日本企業は金魚鉢でえさを与えられている金魚のようなものだということに気がつくはずです。
2013年に習近平氏が就任するまではよかったかもしれません。今の中国は猛獣です。有力な中国企業も骨抜きにされる状況を正視することは重要です。国際感覚というのはそういうものです。中国とビジネスをしている人には「まさか」とか「まだ大丈夫」という気持ちがあると思いますが、国際情勢のパリティは一日にして崩れることがあるのは肝に銘じるべきだと最近とみに感じています。
では今日はこのぐらいで。
「米中金融デカップリング」で中国は自らの喉を絞めることになる
DIAMOND online 2021/07/29
● 習主席が中国企業の米国IPOを 不快に思っているのは本当か?
中国の配車アプリ最大手である滴滴出行(ディディチューシン)への規制強化について、前回の本コラム(2021年7月22日付)「中国政府の国内巨大IT規制強化は『第3次天安門事件』だ」では、情報流出の観点から論じた。
ニューヨーク市場に上場すれば、タクシーの走行記録というセンシティブな情報がアメリカに流出する危険があるから規制したという解釈だ。
だがサイバーセキュリティ調査への対象にしたり中国のアプリ市場から締め出したりしたことが、ディディが株式を上場したばかりのタイミングだったことを考えれば、規制強化について、これとは異なる解釈も可能だ。
それは、「中国企業のアメリカ市場でのIPO(新規株式公開)を、習近平国家主席が不快に思っているから」ということだ。
習近平氏は 中国企業の米国市場へのIPOについて、中国企業が中国市場をないがしろにするものとしてかねてから快く思っていなかったが、今回、その不満が具体的な形をとったというわけだ。
中国当局は、ディディのニューヨーク証券取引所でのIPOを取りやめるよう圧力を掛けていたが、ディディがそれを押し切ってIPOを強行したため、アプリの新規ダウンロード停止という強硬措置をとったという。
中国の威信を強調する習近平が、アメリカでの上場を望んでいないというのは十分にあり得ることだ。こうした見方を裏付ける状況は他にもある。
同じく6月にニューヨーク市場に上場したトラック配車の満幇集団(フル・トラック・アライアンス)と、求人アプリ「BOSS直聘」運営の看准についても、中国当局は同様の調査を始めている。
また、中国政府と中国共産党は、7月6日、国外で上場する中国企業への規制を大幅に強化するガイドラインを連名で発表した。
● IT企業への規制強化は データ流出回避だけではない
昨年11月の中国フィンテック企業アントの上場停止は、ディディへの強硬措置と同じように、突然のことだった。そして、どちらも巨大IT企業のIPOにかかわるものだ。また、ビックデータが関連している点でも同じだ。
しかし、上で指摘したような解釈からすれば、ディディとアントは違う性格の問題だということになる。
アントが上場を予定していたのは香港市場と上海市場だから、外国へのデータ流出という問題とは直接に結び付いていない。
この場合には、民間企業であるアントが収集していた電子マネーの取引データを国家の手に入れるという目的が強かったと考えられる。
● 米国も中国企業の上場を望まず 財務諸表などの開示が不完全
ところで、アメリカ政府も実は中国企業のアメリカ市場での上場を望んでいない。
その理由は、財務諸表などの開示が不完全なことや実地監査ができないことなどだ。
こうした理由から、トランプ前大統領は、開示が不完全であるアメリカの中国企業を上場廃止にする処置を進めてきた。
そして、2020年12月に「外国企業説明責任法」に署名し、成立させた。
これは、アメリカで上場する外国企業の会計監査について、公開会社会計監査委員会(PCAOB)による検査を3年にわたって受け入れない場合には、上場廃止にするとした法律だ。
その後、PCAOBは21年5月、「外国企業説明責任法」における「完全な調査・検査が行なえない会計監査法人」の認定の細則を発表した。
これによって、アメリカの証券取引所に上場する中国銘柄の株価が急落した。
● 外国からの資金で成長した中国 悪影響は計り知れないほど大きい
こうして、米中間の「金融デカップリング(資金面での切り離し)」が進むことになる。アメリカでも中国でも、当局はそれを望んでいる。そうであれば、デカップリングは急速に進行する可能性がある。
それにもかかわらず、これは、中国、アメリカの双方から見て望ましくない結果をもたらす。財やサービスの自由な貿易が関税や規制によって制約されることは、輸入国にとっても輸出国にとっても望ましくない。資本取引についても同じことが言える。
つまり、金融デカップリングは経済的に合理的でない政策だ。とりわけ中国の立場から見てそうだ。これによる悪影響は中国にとって計り知れないほど大きい。
中国は、1980年代の「改革開放」政策の導入以来、資金を外国から調達することによって成長してきた。世界銀行の資料によって、中国への直接投資のネットの流入(対内投資から対外投資を引いた額)のGDPに対する比率を見ると、1990年代の中頃には6%程度の水準だった。これは、他国に比べて飛び抜けて高い水準だ。
中国の経済発展を支えた投資は、自国内で生み出された貯蓄によって賄われたのではなく、主として外資によって賄われたのだ。つまり、中国の経済発展は外資によってけん引されてきたといっていい。
この数字は、最近では1%台にまで低下している。しかし、過去に流入した資本があるから、ストックで見れば依然として高い。
中国の国際収支(2020年)を見ると、経常収支が2740億ドルの黒字であり、金融収支は1058億ドルの黒字だ。
つまり、対外資産が増加している(IMFのデータによる。なお、中国外貨管理局の発表文では、IMF方式とは逆に、このことを「金融収支は1058億ドルの赤字」と表現している)。中国は全体として、経常収支の黒字に対応して対外資産を増やしているのだ(もっとも、誤差脱漏が1681億ドルと巨額なので、この数字をどこまで信用してよいのか疑問がある)。
ただし、IT企業などの先端産業が巨額の資金を外国から調達していることは間違いない。米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」によると、21年5月の時点で、アメリカの主要3取引所に上場する中国企業は248社で、時価総額は計2.1兆ドルにのぼる。
ブルームバーグによると、中国を本拠とする企業のアメリカでのIPOは、21年には前半だけで91億ドルに達しており、通年では14年以来の高水準となる見込みだ。
習近平氏は中国のプライド追い求める。しかし、その結果、外国から資金を調達できなくなり、自ら喉を閉めることになる。
自給自足主義をとれば、必ずそうした結果になる。毛沢東による1950年代の「大躍進政策」の失敗を思い出さざるを得ない。
● 中国企業の株価リスク増加 インサイダー取引の可能性も
ディディの事件を通じて、「中国企業の株価は共産党指導部のさじ加減1つでどうにでもなる」ことが分かった。経済的に合理的なことは予測できるが、合理的でないことは予測できない。中国が金融デカップリングを自ら求めるのは合理的でないので、これに関する中国当局の行動は予測できない。
だから、中国企業の株価のリスクは増した。
問題はそれだけではない。もう1つの大きな問題はインサイダー取引の可能性だ。
仮に政権中枢にディディ規制の詳細情報を知っている人がいたとすると、その情報をもとに先物売りをすれば、(あるいは、プットオプションを購入すれば)、巨額の利益を得ることができたはずだ。
実際にそのような取引が行なわれたのかどうかは全く分からない。しかし、可能性としては十分にあり得ることだ。
アントの場合には、株式がまだ上場されていなかったから、仮に上場延期の情報を知ったとしても、それを取引に使うことは難しいだろう。ただし、アリババ株の取引を行なうことは可能だ。
ディディの株価下落は上場後に起きたので、取引のための時間的余裕は十分でなかったとはいえ、不可能ではないはずだ。今回の事件が明らかにしたのは、一党独裁体制下での市場経済には矛盾があり、どこかで破綻するということだ。
市場経済は、政治的には民主主義体制を前提にしないと成立しない。中国の体制は、この意味で基本的な矛盾を内包している。
今回の決定が中国の体制の矛盾を自ら暴くことになる可能性は極めて高い。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)
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